マンションの選び方



▼マンション業界の現状について

 マンション選びは、土地付一戸建て住宅選びと同じ位の大変さがあります。まず予算を決めることです。しかし、予算と要求を同時に満たしてくれる物件との隔たりは、現実的にかなりの開きがあるようです。予算内で我慢するか、少し無理をしてでも買ってしまうか、迷うところです。ここで選択を誤ると、後々後悔することになります。その場で判断が出来ないときは、あわてずに少し待ってみるのも良い方法です。  

 最近のマンション販売方法は、工事中でも近くの空き地に現地案内所を建てて、そのなかにモデルルームを作ってしまい、完成前の完売を狙っています。販売業者の金利負担を避けるためです。ところがモデルルームでは現実とまったくかけはなれているのです。

 日当り具合、風通し、まわりの騒音、エレベーターの運転音等の状況がわかりません。しかし完成を待っいると、完売になってしまう可能性もあります。

 そこで設計図面上で調べることが出来ることをお教えしましょう。

 鉄筋コンクリート造りのマンションは、気密性がとてもよいのです。特に最近はサッシの気密性が良くなり過ぎて、逆にカビやダニが発生する原因になっております。これではなおさら換気について工夫された風通しの良いマンションを選ぶべきなのです。

 床材も、ダニが発生しやすいジュウタンはやめるべきです。ダニはカーテンにも潜んでいます。注意しましょう。

マンション選びのチェックポイント

▼床コンクリートの厚さ(スラブ厚とも言う)は二○○ミリ以上あるか?

 スラブがあまり薄いと、上の階の住人の足音等の生活音が下に響くのです。

小さな子供がいて、飛び跳ねたりすると「どすん」という音になり、それが頻繁になるとトラブルが生じ、双方の奥さんがノイローゼ状態になって、上下の家族関係がもっと悪くなります。

 以前、神奈川県平塚市の横内団地でピアノの音がうるさいということが原因で、殺人事件がありました。騒音を気にする人にとってはとても深刻な問題なのです。床の仕上げ材として使用しているフローリングは、遮音効果の高い物(フローリングの裏に遮音材を張ってあるもの)を使用しているか調べることが大切です。

 他の床材として、カビやダニが発生するジュウタンは、健康のことを考えても避けた方が良いです。アレルギー体質の人はなおさらです。

▼隣の間仕切の壁の厚さは一八○ミリ以上あるか?

 スラブ厚ほど深刻ではありませんが、壁の厚さも重要です。

 最近のマンションも、ローコスト化が進んでいます。そのためクロス下地とコンクリート壁のあいだに空気層を設けずコンクリートに直にクロスを張ってしまう場合があります。

その場合はコンクリートの湿気がシミがして、クロス全体がカビだらけになります。それが原因で体を壊してしまいます。

 特に家具等を置いて風通しが悪くなっている部分は、カビだらけになっているのです。壁に絵などを掛けていてもやはり同じです。

▼断熱、省エネの工夫が考慮されているか?

 建物の駆体に、どれだけ断熱効果が工夫されているかが大切です。断熱対策がされていないと外壁の温度がじかに伝わってきて、冷暖房効果がわるくなり結露が発生して、かびの原因にもなります。

 一般的によく使われる断熱方法としては、外壁の外側で断熱する方法と、内側で断熱する方法があります。ほとんどのマンションが、空気層を設けて内側断熱工法を採用しています。サッシのガラスもペアガラスを使うと省エネに貢献します。

▼天井は(階高)は高い方が良い。

 ふつうマンションの天井は二三○○ミリ前後で、あまり高くありません。

 しかし最近は、居住性を良くするために天井が高くなって二四○○ミリ前後になっております。天井は高いほど解放感があり良いものです。

 将来、床を張り替えるなどのリフォーム工事や間取りの変更工事をすると、床高は次第に高くなることを頭にいれておきましょう。

▼配管設備を調べる。

 マンションの水回り(洗面所、台所、トイレ)は床下に排水スペースがあるため、ほかの部屋より床が一段高くなっています。その床下には水道管、配水管が通っております。

 将来のリフォームのことを考えると、給排水管は建物のどこから入って、どこに流れているのか調べておく必要があります。書類として残しておくと改装するときに、とても便利です。

差別化を競う新築マンションと中古マンション

▼イージーオーダーマンション時代がやってきた。

 最近の新築マンションは、決められた区画の中なら間取り、内装の仕上げ材が買い主の希望を取り入れられる「イージーオーダーマンション方式」と言う販売方法がとられています。

 この方法は他社のマンションとの差別化を計り、即日販売の促進を狙っているのです。売れ残りがないようにする方法として、これからも様々な提案が考えられております。

 あるマンション業者は、積極的に主婦の意見を取り入れて設計・間取に反映しております。ベランダにおいては、単なる物干場でなく、木製テラスやサンルームにするなど高級指向を目指して差別化をはかり、即日販売に努力しております。  

▼一○年経ったら売り時だ。

 マンションは新築時はよいのですが、一○年がひと区切りと思って下さい。

 一○年経つと給水管の赤錆びの問題、外壁の補修などがあります。それも、毎月の積立金で賄えるとは思わないほうが良いでしょう。

 マンション建設も現状では下請け、孫請けの施工業者が安い工事費でやらされているため、手抜き工事をしているケースがあるのです。

 最近は驚くほどの安い建築費用で、マンション建築を請け負う建築業者があります。「安かろう、悪かろう」という事がここでも言えます。設計図を見てチェックすることを勧めますが、マンションの場合は鉄筋の配筋工事等の大切な部分は、すべてコンクリートを流し込んでしまうため、全く見えなくなってしまいます。ですからマンションの手抜き工事を見抜く方法はとても厳しいのです。 

 注文住宅の様に、いつでも現場を見て手抜き工事がチェックできる訳ではありません。新築マンションの場合は、外壁の劣化、水道管の赤錆び、鉄部の錆び等の共有部の痛みが一○年を区切りとして現われてきます。問題になる前に売却し、新しいものに買い変えた方が良いのです。

▼古い中古マンションは買うな

 「建ててから一○年経ったマンションは売りなさい。」と言っている私です。中古マンションを買うのはやめましょう。土地付一戸建て中古住宅と比較しても、中古マンションは不利です。建築して二〜三○年も経過しているものはドブにお金を捨てるようなものです。

 戸建て住宅のように自分名義のみの土地であれば、その土地をどのようにしようとも誰も文句は言いません。ところがマンションの場合は、土地・建物は入居者全員の共有名義になります。たとえば、手抜き工事が見つかって直そうと思っても、お金がかかる事ですから住人みんなの合意を得なければなりません。したがって共有の所有物であるマンションはとても面倒なのです。

 特に、中古になったマンションは修理をする機会が増え出費がかさみます。場合によっては積立金で賄えないこともあります。そのときは必ず修理代を「出す、出さない」と言った金銭のトラブルが発生し、大きな問題になります。

 ですから私はよほどでない限り、中古マンションを買うのは賛成しません。中古マンションを購入するなら、私は賃貸住宅を借ります。新築マンションを購入することすらよく思っていないのですから。



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