見積りの仕事内容とチェックの仕方



▼基礎工事について

 基礎工事とはコンクリートで作るものです。建物の重量がすべて乗っても変形しないようにしなければなりません。基礎の形状は地盤の状況によって変わってきます。

 ここで、基準となる基礎の形状は金融公庫仕様になります。この基礎形状を弱くなるほうに変えてしまうと手抜き工事と見られ、金融公庫の融資が受けられなくなります。特に基礎の立ち上がり寸法、ベースの厚さに手抜き工事が見受けられます。私が使っている商品で「優れ物」があります。城東化学工業(株)(連絡先○七二○ー六八ー六六一一)が販売している「基礎パッキン」という商品です。基礎と土台の間に厚さ二○ミリの物を入れるのです。すると基礎と土台の間にすき間ができ、風が通り、湿気がなくなり土台が腐らないのです。風通しが良いということは白アリが発生しにくいのです。今までの基礎には換気口が付いていました。風通しには良いのですが、換気口の部分が弱いためにヒビが入るのです。それらの欠点を解決する商品です。四○坪程度の家なら四万円前後で取り付けられます。この四万円は将来的に何十万円もの価値があります。すき間からネズミなどが入ってこないように「防鼠材(ぼうそざい)」という商品があります。必ず取り付けてもらいましょう。私の建てているすべての住宅で基礎パッキンを使っています。


基礎はベタなら安心


地盤より10センチ程度しか基礎が
立ち上がっていない

*見かけは標準納り図と一緒だが...

▼土台について

 土台というのは、基礎と同じように重要です。家全体の荷重がかかるので丈夫で腐りにくい材料を使わなければなりません。使う材質は桧(特1等)、日本ヒバ、米ヒバの特選一等(材質の等級のことをいう。)以上を使う様にします。

 見積り時に、土台に使用材料を指定しないと米栂に防腐処理木材(CCA処理木材とも呼ばれ、クロム・銅・ヒ素化合物系木材防腐剤を染み込ませた木材のことをいう)使われてしまいます。白アリに弱く、腐りやすい「米栂」を薬品のみで処理している材料なのです。

 最近の朝日新聞の平成八年一○月一三日の記事ですが、このCCA処理木材の薬剤は体内に蓄積されるために人体に良くない影響があるようです。CCA処理木材製造メーカーもCCA薬剤の使用を減らせるようにするそうです。いずれにしても大手住宅メーカーはCCA処理土台を使用しています。大きな問題になるまえに使用中止にするべきなのです。

 もっとひどい話ですがローコストを追及している業者は、悪気もなく、腐りやすい「米栂」を使っています。このような住宅を購入した人はとても悲劇です。必ずすぐ白アリにやられます。

 「大引き」も土台と同じように大切な部分です。決して間違っても「米栂」等を使われないようにしてください。


体に良くないCCA処理土台

つかの下からはずれそうな床下のつか

土台火打ちはこのように取り付ける

ただ釘で止めただけの土台火打ち

▼柱について

 柱は、通し柱(一階から二階まで伸びている長い柱)と管柱があります。

管柱の寸法は、長さ三メートルで最低一○五ミリ角、通し柱は六メートルで一二○ミリは必要です。材料は桧、日本ヒバ、杉が良いでしょう。ここで悪役の米栂が登場します。材質的にも弱いので絶対にやめましょう。いくら「防蟻処理をするから大丈夫」といっても、防蟻処理の保証期間は通常五年しかありません。五年後には内壁と外壁の中に隠れている保証期間の切れてしまった柱の防蟻処理は、どのようにするのでしょう。

 そのためにも一階部分の柱には必ず耐久性のある桧、日本ヒバを使うようにしましょう。杉は桧ほど強くありません。ですから一階の柱には向きません。

 最近は無垢の柱より集成材(端切れ材を接着剤で張り合わせた柱)を良く使います。接着剤の効果が、家が建っている間ずっと性能が保持されていればよいのですが、データー的には大丈夫でも、実際はいつまで持つか誰もわかりません。

 以前私は、建築中の現場で集成材の接着が不完全なため、柱が二つに割れそうになった現場を見ております。そのときは二階部分の柱だったため取り替えることができたため問題は解決しました。通し柱だったら大変なことになります。建て主さんが気がつかなかったら応急処置のみで塞いでしまうでしょう。

 そんな状況であっても最近は、通し柱にも集成材を使っているのです。怖い話です。性能的には無垢より一・五倍は強いと言っておりますが、それは接着剤の性能がいつまでも完璧な状態の場合という最低条件が必要なのです。力のかかる部分の柱には、米栂、杉、集成材(通し柱)の使用は考えものです。  


無垢の桧の木

集成材の木材

背割れがないと四方面にひびが入る

▼筋交いについて

 筋交いというのは木造軸組工法には、絶対に必要なものです。住宅の強度を左右します。図のように、引っぱりと圧縮のバランスを考えて施工しなければなりません。この施工に手抜きがあると、地震がきたらとても危ないのです。

 設計図にも筋交いのサイズと数量が記してあります。図面のとおりに施工しているか、必ずチェックしましょう。


まともな筋交いの付け方

すきまの空いている筋交い


補強金物はしっかりつける
(「つよし君」使用)

▼補強金物について

 神戸の地震があってから、「丈夫な家造りをしなければいけない」ということが言われております。使用木材もそうですが、そのままでは接合部分が弱いため、金物で補強します。三階建住宅には金物に関して、基準が厳しくなっております。

ところが、使い方がわからない大工さんが多いため、建て主さんもチェックするべきです。地震のときには三階建て住宅の場合は、二階建て住宅より衝撃を多く受けるので補強金物の取り付け方がとても重要です。住宅金融公庫が発行している「木造住宅工事共通仕様書」を買い求めると、金物の使い方が説明されております。とても参考になります。

 ここでお勧めの金物があります。(株)ワンウィル(連絡先045ー664ー5211)という会社が販売している「つよし君」という商品です。羽子板金物という商品に変わるもので、溶接がとれたり、ナットが緩んで落ちてしまったりすることがありません。安心して使える優れ物です。公庫住宅の認定も取っております。最近はナットが緩まず従来のものより優れた新型の「ホールダウン金物」を開発しています。

▼屋根材について

 私は屋根材に瓦は使用しません。瓦メーカーの人には申し訳ありませんが、瓦はとても重いのです。重心が上のほうになってしまうため、地震があったら倒れやすく、落下の危険性があるのです。ですから、瓦屋根の上に貯水タンク内蔵タイプの太陽熱温水器(三○○キロ位の重さがあるものをいう)を乗せるのは自殺行為なのです。

 太陽熱温水器は省エネという点では大賛成ですが、地震があった時のことを考えると、工務店の経営者の意見としては反対です。特に三階建て住宅に太陽熱温水器を乗せるのは「もってのほか」です。それを勧める業者も業者で、その良心を疑います。屋根材は軽くするべきです。「ステンレス塗装板葺き」がお勧めです。

▼外壁について

 最近の外壁材はほとんどがサイディングを使います。以前はモルタル仕上げの外壁が多かったのですが、施工性の安定化と工期の短縮化のためには、サイディングが主流になります。サイディングと言ってもいろんなメーカーがたくさん作っているため、何百種類の膨大な種類になっております。予算に応じて、その中から気に入った物を探すのは大変ですが、根気を出して探せば、サイディング選びも楽しいものです。

▼電気工事について

 現在住んでいる家でコンセントが足りないとか、照明が少ないといったことが感じられませんか?その足りない部分を今度の住まいに反映させるのです。今までの経験では、コンセントは各部屋に最低三ヵ所は必要です。予算が無いからといって、予算を削るとあとあと後悔します。パソコン、テレビ、電話、ファクスなどたくさんの電子機器が家庭に入り込んできます。クーラーも各部屋に取り付けられるように、専用コンセントを取り付けておきましょう。空調換気扇などもこれから取り付けるようになります。それらの工事についての対策も考えておきましょう。                      

▼鋼製建具について

     

 鋼製建具というのは、主にサッシのことをいいます。サッシは五〜六社の大手メーカーが製造販売しております。使用用途、使用場所によってサッシの選定ができるようにバリエーションもたくさんあります。サッシの色も、ホワイト、ブロンズ、ブラックの三種類が主流です。出窓などもさまざまな種類があり、どれにしてよいか困るぐらいです。そのときはプロの意見を聞きながら、予算と照らし合わせながら選定するほうがベストです。

 最近は、高気密・高断熱住宅に対応するため、少々高くてもサッシのガラスを断熱性の高いペアガラス(二重ガラス)にするケースが多くなっています。ペアガラスの導入は省エネと言うこともあって、これからの主流になっていくことでしょう。

▼網戸について

 網戸の網は二種類あります。ビニール製とステンレス製があります。ビニール製は破れやすく、熱に変化して直ぐ溶けてしまいます。価格は高いのですが、ステンレス製ならば耐久性もあり、そのようなことはありません。

ちなみに私は、よほどの希望がない限り、ビニール製の網戸にしています。

▼雨戸について

 マンションになぜ雨戸がないのか今でも不思議なのです。地域によっては取り付けないところがありますが、一般的には一戸建住宅には雨戸は取り付けたほうか良いと思います。台風のときとか、盗難防止などには効果を発揮します。

 雨戸にも、種類がたくさんあります。塩ビコーティングされている鉄製雨戸と、アルミ製雨戸があります。防音断熱タイプ、通風型ガラリタイプなどがあります。

 予算に応じて専門家のアドバイスを受けて決めましょう。


「自然の中でくらそう」

▼床板と健康について

 床板もさまざまなメーカーがたくさん作っております。

無垢の床板、複合パーケット床板、防音加工床板などがあります。板厚もさまざまです。

1階床板は、捨て張り(厚さ12ミリのベニヤ板)の上に床板を貼ります。床板は二重にしたほうが丈夫です。根太は45ミリ角を303ミリ間隔に入れます。

45ミリ×30ミリの米栂を根太としてよく使いますが、サイズも細く根太が折れることがあり、腐りやすいのでやめましょう。一階床の畳の下地の板としてベニヤ板をよく使いますが、床下の湿度の関係で畳が蒸れるので好ましくありません。防湿コンクリート処理をしていれば問題ありませんが、湿度調整してくれる厚さ一二ミリの杉板を使いましょう(二階の畳下地板は、湿気がないためベニヤ板でもかまいません)。


洗面所の床の大引きは栂ではすぐ腐る

複合積層床板

防音化工床板

無垢の床板

 脱衣所の床は濡れた足で歩いたり、洗濯しているときや、洗面しているときの水が飛び散ったりして、痛みがひどいのです。普通の複合パーケット床板では長持ちしません。私は水が良くかかる場所は無垢の床板(チーク、花梨、なら、ぶな、桧などの水に強い材木)を使います。

 なにも注文しないと表面にビニールを貼っているCF床板を使われてしまいますが、表面が呼吸をせず蒸れてしまい、下地のベニヤ板が直ぐ腐ってしまい、床がブカブカになります。コスト的にも決して高いものではありませんし、脱衣所の面積も少ししかありません。無垢の床板の使用を勧めます。

 無垢の床板は呼吸をし、湿度調整をしてくれるのです。私は予算さえ合えば脱衣所のみでなく、すべての部屋の床板に使うようにしています。アレルギー体質の人にはぜひとも勧めたい商品です。直、無垢なら何でもよいと言うわけではありません。表面を塗料仕上げしている床板は、呼吸しないので勧められません。最近の室内の仕上げ材は、複合パーケット床板で、壁はビニールクロスの場合がほとんどです。このままでは呼吸することがなく、健康の人でも健康を害してしまいます。特にマンションは不健康住宅の極みなのです。


身体をこわしてしまうと意味がない

▼セントラル空調システムについて

 高気密、高断熱住宅化されている最近の住宅は、外気と遮断することを勧めております。そのため、すき間風が入らなくなり結露が発生し、カビやダニが繁殖するのです。

 それらの問題を解決するべく、住宅メーカーや電気メーカーは、各部屋に24時間たえず新鮮な外気を取り入れ、カビやダニが発生しないような工夫をしています。

 外気を取り入れる室内側の吸気口も、フィルターを取り付けることにより、汚れのない新鮮な空気が取り込めるようになっているのです。押入れにも湿気がないようにするために外気を取り入れられるように工夫がされてます。

またエアコンと一体化することにより、住宅金融公庫より一○○万円の割り増し融資が受けることができます。この場合は、開口部の窓ガラスにも断熱性の優れているペアガラスを使うと、より効果的になります。将来的には、健康にもよいセントラル空調システムが大いに取り入れられるでしょう。特にカビやダニに悩まされているマンションでは、これから必要なシステムになります。

▼キッチンセットについて

 キッチンセットは、たくさんのメーカーがさまざまな種類を製造しております。

金額的にもさまざまです。予算があればよいのですが、無理に高額な物を求める必要はありません。建築資金が予定よりオーバーした場合、まず予算を削られるのはグレードの高い台所セットなのです。ちなみに住宅展示場に展示している台所セットは、高級グレードを展示しています。

 私は、高価な台所セットを使うことを勧めません。金額の差は、カウンター(大理石かステンレス)の違いと、扉の仕上がりによって変わってきます。ベースの骨組みはほとんど変わりません。最低グレードで十分であると思います。カウンターは、耐久性のあるステンレスが良いでしょう。コンロの下に組み込む電子レンジは使うときに腰をかがめるので、高齢者にとっては不便です。カウンターの上に設置するタイプが使いやすいのです。カウンターの高さも各メーカー共二種類あり、台座で調整するのです。

 高さの希望を言えば、カウンターを理想の高さにしてくれるメーカーもあります。親切な業者は、組み立てるときに細かな要望に対応してくれます。コンロなども、さまざまなタイプがあるのでカタログをよく見て研究しましょう。

▼ユニットバスについて

 私は、初期のころのユニットバスの採用については消極的でした。ところが、今はユニットバスを勧めます。ユニットバスは、浴槽、洗い場、内壁、天井などの部品を工場で作り、現場で簡単に組み立てられるのです。給排水工事も簡単で、施工がしっかりしていれば、漏水などの心配がありません。

 そして最近のユニットバスは仕上げがとてもよくなっております。タイル仕上げの浴室と比較しても、タイルのひび割れの心配がありません。ひび割れた箇所から水が差し込み、下地の材木や柱、土台等の重要部分を腐らせると言う心配がなくなりました。そして何といっても寒い季節になっても、ユニットバスの中はとても暖かいのです。高血圧の人や高齢者の人にとって、とてもやさしいユニットバスなのです。

▼洗面台について

 洗面台は選定するのに苦労します。種類が多すぎるのです。予算にもよりますが、洗面ボウルは陶器製の大きめのものを選びましょう。FRPボウルは安っぽいのでやめましょう。

 蛇口はシャワー付きの洗髪タイプを選びましょう。もちろん、温度調整付きの蛇口のほうが熱湯によるヤケドもなく便利です。

▼給湯機について

 給湯機もさまざまな種類があります。熱源はガス、石油、電気があります。地域に寄って熱源は異なります。最近は、浴槽の追い焚き機能と一体化した給湯器がよく使われております。その中でもボタン一つでお湯張り、追い焚きなどを機械が自動的に運転してくれる商品があり、とても便利です。リモコン付きの給湯機もあります。

▼冷暖房について

 冷暖房の熱源は灯油、ガス、電気があります。使用熱源は地域によって異なります。私は電気タイプのエアコンを勧めます。暖房で一番ランニングコストがかからないのが、灯油です。ちなみにエアコンの設備屋さんは、熱源は灯油を勧めております。

▼タイルについて

 タイルは仕様場所と使用目的を間違えなければ、何でもかまいません。品質は国産品ならどこでも安心です。見積り時の予算オーバーのときに、直ぐにグレードを落とすのはタイルなのです。

▼雨樋について

 雨樋は一般的には大きく分けて二種類に分かれます。角型と丸型があります。角型には、大型と小型があります。デザイン的には角型のほうが良いようです。

 雨樋でも安物を取り付けると、屋根に積もった雪で変形してしまうことがあります。

最近は、変形を防ぐために、鉄板をプラスチックではさみ込んだ雨樋が販売されています。丈夫で良いものです。金額的にもたいして変わりません。採用することを勧めます。

▼木製建具について

 今、木製建具に異変が起こっています。今まで建具は建具屋さんが寸法をとり、建具を作り、取り付けていました。そして建具枠を含めて塗装をするのです。

 ところが、最近は建材メーカーが、ドア枠込みの完成品のドアを安く販売しているのです。それが大工手間を考えると三分の一〜四分の一ぐらい安いのです。建具屋さんが作る建具と比べると重量感もあります。しかし大手の住宅メーカーと同じ仕上がりになってしまうのです。そして完成品のドアはこれから主流を占めるでしょう。しかし私は手造り住宅を目指しているため、なるべく建具屋さんに作ってもらうようにしています。



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